歴代ケンタッキーダービー馬(及びアメリカ三冠)の名前の意味 | |
1883年 | |
1883年 KD:Leonatus 牡 父 Longfellow 母 Semper Felix PS:Jacobus 牡 父 The Ill-Used 母 Nellie James BS:George Kinney 牡 父 Bonnie Scotland 母 Kathleen ------------------------------------------------------------------------ Leonatus は、ラテン語の組み合わせで Leo(獅子) + Natus (生まれ)のこと。獅子のように猛々しかったのか、単にそのように強くあって欲しいという願望のどちらかであろう。合成語であることは容易に分かるようで、当時ニックネームとして Natus から Nat と呼ばれていたそうだ。 父母とは意味の上で特に関係がないようだが、一応見ておくことにする。 父 Longfellow は、直訳すると「背の高い奴」くらいの意味で、実際この馬は胴が長く、そのためにこの名が付けられたということである。 さて、これだけでどこかで聞いたことがあると思い出された方は相当な記憶力の持ち主だ。実は 1879 年の第 5 回ケンタッキー・ダービー馬 Lord Murphy の母親 Wenonah の説明中で、この名前が「アメリカの詩人ロングフェロー Henry Wadsworth Longfellow (1807-1882) が書いた「ハイアワサの歌 Hiawatha 1855」に主人公ハイアワサの母親として登場した」と書いたのであった。 しかしこの 2 頭、血統的にもオーナーとしても特に関係がなさそうで、単なる偶然で名前が付けられたとしたら、この Longfellow と作家はあまり関係が無いのかもしれない。 母 Semoer Felix も元々はラテン語のようで、「何時でも幸せ、常に繁栄」という意味になる。ただこれも、もしかすると人の名前であるかもしれないが、それ以上は分からなかった。 Jacobus は James のラテン語表記の一種であり、またジェームス一世の時代の金貨を特にこう呼ぶそうだ。 明らかに母 Nellie James からの連想であるが、 Nellie James がどういう人物か、ジェームズ一世(または二世)と関係ある人物がいるのではないかと調べたが、良く分からなかった。 父親は Ill-Used で、「酷使された」とか「虐待された」という意味であったから、金貨があちこち使われて擦り減っているとでもいう意味ではないかと思う。 だが、「The Names They Give Them」では、Jacobus はジェームス二世のことことであり、「名誉革命」によってフランス・スペインへと逃亡してひどい目に会った{虐待された}ことを指している、と書いている。 どちらにしても繋がりがあるので、両論併記としておこう。 George Kinney は、オーナーの友人の名前だそうである。どういう人物か調べてみたのだが良く分からない。とにかくこの頃のアメリカの馬には、友人や親戚など知り合いの名前をやたらと付けるので、その人達がよほど有名にならないと分からない。 父親 Bonnie Scotland は、「素晴らしいスコットランド人」といったような意味で、bonnie はスコットランド語であるが、どうも元はフランス語・ラテン語系統らしく、フランス語の Bon 「素晴らしい」と同じ言葉のようだ。 ただ、人名で Bonnie と付ける場合は通常女性であり、なぜ牡馬に Bonnie と付けたのかは少々疑問の残るところである。まさか、スコットランド人がキルトというスカートのようなものを着るので、それを揶揄しているのではないと思うが。 母親の Kathleen も人名で 、Catherine と同じであるが、 K を使う形はアングロ・サクソン系らしく、元々はギリシャ神話から出た名前だと言われている。 ただ、ギリシャ神話の何から変化した名前なのかは色々な説があるようで、Hecate から派生した Hekaterine であるとか、Katharos をローマ人が Katerina と書いたからとも言われている。 --------------------------------------- 三冠レースの概況 ---------------------------------------- 第 9 回ケンタッキー・ダービーは、当初 5 月 22 日に予定されていたが、馬場がドロンコでどうしようもなく、1 日延期されて 5 月 23 日に 7 頭立て、当然馬場は重(Heavy)で行われた。 スタートは一発で奇麗に出て、まず Drake Carter が先手を取ったが、2 ハロンほどで本命の Leonatus が代わって先頭に立ち、2〜3馬身差を付ける。 これを Chatter と Lord Raglan が追って差を詰めて来たが、Chatter は向こう正面で息切れして、結局最下位に落ちた。 Lord Raglan が食いついていたが、直線中ほどでよれ、Leonatus の 3 馬身差快勝となった。2 着には再度伸びた Drake Carter で、 Lord Raglan が半馬身差の 3 着になった。 Leonatus は、ケンタッキー・ダービー優勝の表彰式で掛けられたバラのレイを食べようとしたという逸話が残っている。 プリークネス・ステークスは、僅か 2 頭立てで 5 月 26 日に行われ、人気の Jacobus が Parnell に 4 馬身の差を付けて楽勝した。 続くベルモント・ステークスも 4 頭立てという少頭数で、 6 月 9 日に行われ、一本被りの人気だった George Kinney が 2 馬身差で優勝した。2 着は Trombone 、3 着 Renegade だった。 ---------------------------------------- 三冠勝ち馬・出走馬のその後など ---------------------------------------- Leonatus は通算成績 11 戦 10 勝 2 着 1 回とほぼ完璧な成績、獲得賞金は 21,435 ドルで、幾つものステークスに勝っている。 引退後種牡馬となっているが、それほどの大物は残していないようだ。 1898 年に 18 歳で死亡した。 Jacobus は、通算 45 戦 11 勝ながら、 6,732 ドルが総獲得賞金なので、プリークネス以外ではあまり大きなレースを勝っていないようだ。 引退後も詳細は不明。 George Kinney は、ジェローム・ハンデなど幾つものステークスを勝っている活躍馬だが、通算成績などが良く分からない。 引退後種牡馬になっているが、これもどの程度の産駒を残しているかはあまりはっきり分からない |
|
------------------------------------------------------------ 参考文献・資料・検索サイト・辞書 ------------------------------------------------------------ |
|
Kentucky Derby 127th Run for the Roses (Kentucky Derby Souvenir Magazine, May 8th, 2001 The Bloodhorse) 126th Preakness (Souvenir Magazine, May 19th, 2001 The Bloodhorse) 133rd Belmont Stakes (Souvenir Magazine, June 9th, 2001 The Bloodhorse) NYRA Year Book and Media Guide 1995 (New York Racing Association Inc 1995) Churchil Downs - A Documentary History of America's Most Legendary Race Track(Samuel W. Thomas, 1995 Kentucky Derby Museum) Hoof Prints of the Century (サラブレッド・レコード誌の 100 周年記念で過去記事の抜粋を集めたもの、編集人 William Robertson & Dan Farley 、1975) The History of Thoroughbred Racing in America (William Robertson, 1964?) 中央競馬レコードブック1999年版(中央競馬ピーアール・センター編 1995) 競馬学の冒険(山本一生著 毎日新聞社 1998年) ケンタッキー・ダービー・ストーリーズ(ジム・ボラウス著 桧山三郎訳 山田俊一解説 荒地出版社 1996 年) ケンタッキーダービー、プリークネスステークスについては、下記のチャーチルダウンズ及びピムリコ競馬場の URL に詳しく書かれている。ベルモントステークスは、ベルモントパークの URL にはほとんど何も書かれていないが一応参考までに挙げておく。 http://www.kentuckyderby.com/kderby/history/charts/ http://www.pimlico.com/preakness/index.html http://www.nyra.com/Belmont/default.asp 下記の 2 つはサラブレッドの名馬について詳しく掲載されているサイトなので、 今のところ本文とは直接関係無いが参考までに挙げておく。 http://www.thoroughbredchampions.com/ http://www.tbheritage.com/ 広辞苑(第 4 版 1991)/ 研究社 新英和(第 6 版 1994 1996) 新和英中辞典(第 4 版 1995 1996) Electronic Thesaurus (INSO Corp 1987)Roget's II: The New Thesaurus (Houghton Mifflin Co. 1980) < All in the IC Dictionary TR-9700 Seiko Instruments > http://www.onelook.com/ http://www.altavista.com http://www.google.com/ |