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先週の「ギャロップ」に、「20世紀の100名馬」が発表されていた。最初筆者はちょっと勘違いしていて、これをサンケイの企画だと思っていた。そうではなく、JRA本体の主催キャンペーン。だとすれば売上げ低迷の打開策、テコ入れ、そのひとつなのかどうか。 ともあれ、注目の第1位はナリタブライアン。2位スペシャルウィーク、3位オグリキャップと続いていた。エルコンドルパサーは 10位、グラスワンダー 13 位、タイキシャトル16位。シンボリルドルフは6位、そしてシンザンは7位であった。 フリーハンデとかではなく、あくまで人気投票だから、結果をあれこれいうのは、まあ不粋というものなのだろう。 それでもナリタブライアンの1位はなんとなく理由がわかる。少しキャリアのあるファンにとって、今この馬は一番美しく見えるときなのだろう。その走りが、レースぶりが、まだ瞼に残っていて、しかし少しずつぼんやり遠ざかりつつもある。 ルドルフやトウカイテイオー、ましてシンザンなどはすでに伝説の域に達してきた。人気投票の順位はしかるべき地点に落ち着いたということか。 ただ個人的にはがっかりしてしまうこともあった。わがテリトリーの南関東馬がおおむね無視されている。 ホスピタリティ、ロッキータイガーは最低入れてほしかった。ミスターシービー、カツラギエースの比較からはサンオーイも資格がある。気がついてみるとロジータの名前もない。 だいたいメイセイオペラ54位に対し、なぜアブクマポーロが番外なのか。フェブラリーSに出たかうんぬんは関係ない。ポーロはどうみてもメイセイオペラより強い馬だ。「JRA、地方すべての日本の競馬を対象とする」と応募要項にありながら、ここには地方競馬の実績、力関係が反映されていない。 まあしかし、不公平だ、客観性がないといったところで、これは選考ではなく投票だから仕方ないか。 もうひとつ。昨今の南関東馬に色気とか華がなくなったのは事実である。ダート統一Gが軌道に乗り、以後かえって南関東馬は自陣にひきこもる傾向が強くなった。 不可能を可能にする、そんな野心とかガッツを感じさせる馬が見当たらない(人間の問題だが)。それではファンにアピールしない。 よく思うこと。「好きな馬」をノータイムで答えられない時代になった。友人、知人としばしばそんな話になる。 ホスピタリティは日本馬同士では全勝だもんなとか、イナリワンはやっぱり英雄だよなとか、そういう昔話は語れても、「今好きな馬」を問われて、すんなりとは浮かんでこない。 筆者の場合、1年およそ300日予想をつけ、その生活そのものにマンネリ感があるのがひとつ理由だが、まじめなサラリーマンである友人たちにもそんな傾向があるらしい。 「これっていう好きな馬が何頭かいないと、やっぱり馬券も迷っちゃって…」。 いろいろ原因はあるだろう。にわかには説明できない。が、ひとつ思い当たったのは一流馬の引退が早すぎること。 たとえばスペシャルウィーク。オーナー、関係者には引退の理由(いうまでもなく経済上の)があるだろうが、ファンにはどこか釈然としない去りぎわにみえた。 どう考えてもまだ走れる。勝手な言い分を承知で書けば、傍観者はやはり、いつも大河ドラマが見たいのである。栄光と挫折。すべてを見届けて、はじめてその馬に本物の感情が入っていく。 ☆ ☆ ☆ 9月5日、浦和競馬場で行われた「さきたま杯」は、今年もJRA馬の上位独 占に終わった。交流G3、ダート1400メートル、馬場不良である。 1:レイズスズラン 55 江田照 1分 24 秒7 2:フェイマスケイ 55 石 崎 3 3:タガノサイレンス 56 松永幹 首 4:ユニティステージ 53 堀 1 5:アブクマレディー 53 大 塚 頭 レイズスズランは、リザーブユアハート、アブクマレディーの逃げ争いを深追いせず、3コーナーから外々を捲って出た。 結果成功。雨上がりにしては案外重たい馬場になり、持ち前のパワーが生きている。かつて東京でオープン特別をファストフレンド相手に勝ったシーンが思い出された(オアシスSだったか)。 障害練習というのは、馬によっては相当いい経験になるのだろうか。幅のある好馬体がパドックから目立っていた。 フェイマスケイ、タガノサイレンスの2着争いは、やはり鞍上の差が出たのだろう。早めに動いた石崎。終始インに詰まり気味だった松永幹。馬は間違いなく後者が強い。 南関東ただ一頭善戦のユニティステージは力をつけている。本来の先行策がとれず、この内容なら次へ期待が持てそうだ。 筆者は▲=○でかろうじて的中。3=2番人気だから胸も張れないが、これで馬単37倍とは、やはりこの馬券の面白さだろう。 JRAは、今もこの馬券の導入を考えていないらしい。理解に苦しむ。最初は地方競馬への配慮、競合を避ける武士の情かと思ったのだが、もうそんな余裕もないだろう。謎のひとつである。
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